No Sleep Till 神泉

Words: Mako Ayabe
Images: Kentaro Yamada

2018月5月30日

前回のTHE CENTRALに続き、Need Supply Co.の友人を紹介する企画の第2回目に登場するのは、神泉駅前にアトリエを構える帽子ブランドBona Capelloのトム・オブライエン。2世紀前のツールを使い、一点一点丁寧にデザインされたビスポークの帽子を作っている。神泉の好きなところ、そしてエリカ・バドゥの帽子を手がけるようになった経緯について語ってもらった。

日本へ来たのはいつでしょう? そしてそのきっかけは?

何度も遊びには来ていたんだけど、住み始めたのは4年前。最初に来たのはミュージシャンのツアーの専属シェフとして。オーストラリアでオーガニックカフェで働いたときに、その店に来ていたミュージシャンたちに声を掛けられたんだ。

シェフをしていたんですか?

そう、地元のビーチの近くのカフェで。僕は昔から手先が器用だったんだ。それに日本食にもともとすごく興味があって、栗原はるみさんとかの英訳されている日本食のレシピ本を手に入れて、片っ端から試していた。日本人が普通は家庭で作らないようなものも作ったよ。たとえばラーメンのスープを3日かけて煮てみたり、出汁をとった後の昆布で佃煮を作ったり……。オーストラリアでは昆布が高かったから無駄にしたくなかったから。それでいつか日本に住んでみたいと思っていた。

どうして帽子を作りはじめたのですか?

姉がコスチュームとセットデザインをする仕事をしているんだけれど、ある日衣装の靴に合う帽子が必要になった。それでドイツから帽子の型を取り寄せて、僕も手伝って自分たちで作ってみたんだ。無事、舞台用の帽子は完成した。でもその時にもっとを帽子作りを続けたいな、と思った。それが今から約8年前。

その後、独学でスキルを磨いたのですか?

そう。ニューヨークとかロンドンの帽子職人に質問したりして。その中には代々受け継がれてきた技を、まったく初心者の僕に教えてくれる人たちもいた。何度も何度も失敗を繰り返しながら、少しずつコツをつかんで上達していったんだ。ずっと集めているのは、このアトリエでも使っている古い道具。木型やミシン、アイロン。これは帽子のツバを切る専用のカッター。こういった物は18世紀から19世紀、帽子のクオリティが最も良かった時代に作られて、ずっと職人が使っていたものなんだ。この世からなくなってしまわないように、コツコツと集めている。

エリカ・バドゥの帽子を作っていますが、どうやって依頼を受けたのでしょう?

僕のインスタグラムを見たエリカから「私も欲しい」と連絡があったんだ。今では全部で14個作ったよ。彼女はハイエンドな服を着ているけれど、新鋭デザイナーを発見してコラボレーションするのも大好きな人。デザインや納期に関する要望も多いけれど、「あなたが決めていいの」とも言ってくれる。自分でも最終的に本当に形になるのかわからないような、実験的な帽子ばかりだから毎回とても大変な作業なんだ。

トムのシャツはNEEDのFargo Shirt

神泉についてどう思いますか?

最高! 渋谷へのアクセスも抜群だしね。渋谷のバーで飲んでいて、誰かが「明日帰国するんだけど、帽子を作って!」と言えば、アトリエに移動してすぐに採寸できるのもいい。あと、神泉の商店街にはおいしいお店がいっぱいある。一番好きなのはアトリエの隣にあるまん福亭(*1)。最初は入るに勇気が必要だったんだけど、一度行ってみたらマスターも他のお客さんもすごく優しくて、今では名前を覚えてもらってしょっちゅう通うようになった。この辺りは、昔ながらのなんか温かい雰囲気が残っているから大好きなんだ。大都市のど真ん中なのに。

*1  THE CENTRALの深津さんもおすすめしていた居酒屋

神泉が好きすぎて“No Sleep Till 神泉”のジャケットを作ったのですか? 

そう、だって神泉は僕のフッド(*2)だから! Beastie BoysのNo Sleep Till Brooklynを文字ったんだ。これを着ているといろんな人に話しかけられるよ(笑)。

*2  地元、縄張り

トムのシャツはNEEDのFrancis Shirt、時計はThe Horse

トムさんにとって帽子とはどのような存在ですか?

人は「頭からつま先へ見られる」と言うので、最初に目に入って来るのが帽子。だからとても大切だと思う。それにどんな帽子を被っているかで、その人はどういう人か伝わってくる。カスタムメイドの帽子は、フィットして脱げたりしないから、自転車に乗っても、コンサートで激しくヘッドバンギングしても大丈夫! 一度カスタムの帽子を被ったら、すぐに「もうひとつ欲しい」って思うはず。それに生地も飾りのリボンも、裏地も自由に選べるしね。サラリーマンのお客さんで、自分のスーツの生地と合わせて帽子を作った人もいたよ。昔の道具を使って伝統的な製法でカスタム帽子を作っているけれど、つねに僕なりのひねりも加えてることを大切にしている。

帽子作りの工程で一番楽しい部分はどこでしょう?

お客さんと一対一で向き合って、デザインや素材を決めるときかな。お客さんはずっと夢に見ていた帽子をとうとう手に入れることができて、すごくワクワクしているし。そんな姿を見るのが嬉しい。僕はお客さんをかっこ良く見せたいし、彼らもかっこ良くなりたいし、同じ方向を向いていると感じられる瞬間。

今後のビジョンはありますか?

ショー用のオートクチュールの一点ものを制作したり、アーティストやミュージシャンのための特別な帽子を作ったりしたい。あと、もっと研究を続けて今までに存在しなかったような素材感を生み出したりしたい。将来的にはビスポークとレディメイドのふたつのラインを設けることになるかもしれないけれど。あと、専用の道具を集め続けること。この世から消える前に!

 


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