陶芸家Shino Takeda

2016月12月14日

渋谷区西原にあるPaddler’s Coffeeで使用されているマグカップはひとつひとつ色や形が違う。手作りのぬくもりとポップな色使いが美しい、印象的なマグカップだ。こちらの作品を作っているのは、ニューヨーク在住の陶芸作家である、Shino Takedaさん。彼女の人気ぶりは、まだ陶芸を始めて6年しか経過していないとは思えないほど。ニューヨーク・ブルックリンにある、Shinoさんのご自宅とアトリエを訪問し、陶芸を中心に回る彼女の日常について話を伺った。

Shinoさんがニューヨークへ来たきっかけは、高校を卒業後、ダンスを勉強するためだった。しかし、実際に渡米してみると、ダンスに対する熱は少しずつ冷めていき、故障による3カ月のドクターストップも相成り、踊りたいという欲求が徐々に減っていくことを感じたのだという。

その後、ブルックリンの高級和食レストラン、Blue Ribbonでウェイトレスとして働き始めた。明るく丁寧なサービスを提供するShinoさんが担当するテーブルを希望する顧客も増え、接客業は彼女にとって天職といえる仕事だった。マネージャーにまで昇格し、充実した日々を送っていた。そんな中、新しい趣味として始めたのが陶芸。しかし、軽い気持ちで臨んだ体験レッスン当日からすっかり陶芸の虜になってしまった彼女は、翌日から仕事前に教室へ通うのが日課となる。

 

 

そして驚くごとに、彼女の作品は、陶芸を始めてたった2〜3カ月でブルックリンのライフスタイルショップで取り扱われることとなる。瞬く間に“陶芸作家”としてのデビューを果たしたのだ。

デビューのきっかけは、レストランの常連の誕生日だった。プレゼントを用意する時間がなかったShinoさんは、ご自分で作ったカップを贈った。常連はそのカップを大変気に入り、家具や雑貨を取り扱うライフスタイルショップのオーナーをしている友人に見せたのだという。

「あなたがShino? あなたの陶芸をぜひうちのお店に置きたいわ」とそのショップオーナーは突然Shinoさんを訪ねてBlue Ribbonまできた。「ちゃんとしたものを作っていないから、そんなの無理です。恥ずかしい」とShinoさんは即座に断った。幼いころから母親が集める美しい食器や陶器に囲まれて育った彼女は、陶芸の経験こそ浅かったが、陶芸を理解していないわけではなかった。そのため、“底が重い”、“カタカタいう”などといった自分の作品の欠点もよくわかっていた。しかし、オーナーはShinoさんのアパートを訪問し、段ボールひと箱分の作品を持って帰り、彼女の店で売り始めた。

 

 

Shinoさんは営業活動を一切していない。タイミングと出会いに恵まれ、「人に生かされている」とつねに感じているという。「1990年代の、質より量の時代が終わり、10個よりもたったひとつの気に入ったものを手に入れたい、とみんなが思うようになっていたの。それに完璧な美しさよりも少し不完全なほうがいい、といった風潮も手伝ってくれたと思う」とShinoさん。また、インスタグラムを始めとするSNSで作品をアップし始めると、作品を気に入った見知らぬ人たちがタグ付けをし、世界中に広がっていった。

 

スタジオは自宅からバスで30分ほどの場所にあり、毎日のように通っている。「陶芸オタクだから、週末がないくらい。一度スタジオに行ったら12時間とか連続でやっているの。最近はもうちょっと人生を楽しんだほうがいいかなと思ってるけれど、やっぱりフリーランスだから、仕事の依頼があればあまり断りたくないし、締め切りに間に合わないようなことがあっても、アシスタントは雇いたくない」と話す。しかし、休暇を取ると決めたら、数日間の休みではなく「バーンと1カ月とか取るの。日本にも6週間くらい帰って、リチャージする」とのこと。

 

 

 

Shinoさんは、作品を作る前に完成図や配色は決めない。「そんな細かいことは、私はできない。終わったなと感じたら、止める。マグを作ろうかなと思っていても、大きくなりすぎちゃったら、じゃあ花瓶でいいや、みたいな。でも終わりどころはわかる。これ以上触ると花瓶が崩れちゃうなとか、止めどころはわかるんだけど、最初から計画とかができない」。

 

 

この作品作りに対するこの姿勢は、彼女の人生観にもつながっている。「人生も全部直観。誰かと友だちになるときも、“この人のこと知りたいな”と思ったら、もう間違いない。でも、嫌いとかじゃなくて、その時に興味がないと、多分もう一生その人に興味がわかない」とまさに竹を割ったような性格の持ち主だ。

 

 

Shinoさんの描くデザインや色使いはとても個性的だ。一体どのように生まれたのだろう? 「スタイルは最初から変わっていないと思う。陶芸教室が好き勝手にやらせてくれる場所で、オーナーがそこにいてくれるから、何か本当に困ったときは彼女が助けてくれていたの。この色使いができたのも、実はちゃんと教えてもらわなかったからかも。下絵具っていう、絵具みたいに描けるもので色を付けて、その上に透明な釉薬をかけて普通は安全にするの。でも、私は知らなくて、”この色、明るくてかわいい”みたいな感じで透明を塗らずに作っていたの。で、オーナーさんがそれを見ていたらしいんだけど、まさか私がそのことを理解をしていないとは知らずに、”好き勝手やってるな、面白いな”みたいな感じで放っておいてくれたの」。

そして2年ほど経過してから、普通は全体に透明を塗るということをオーナーから聞き、とても驚いたらしい。「でもほら、口に当たらない部分以外は徐々に色が変わっていくのも面白いかなと思って。透明にコーティングしたほうが守られているけれど、私は口で触るところや食べ物が触るところまでしか透明を塗っていないの。ふたつのテクスチャがあったほうが好き。そういうのも陶芸をちゃんと学んでいないからできたことだと思うと、なんかちょっとラッキーだったかな」とShinoさんは話す。

そして、最後に「陶芸家の娘とかだったら、そういうの恥ずかしくてできないでしょ」と嬉しそうに加えた。

 

Shino Takeda Pop Up

PLACE: Paddler’s Coffee
DATE: 12月23日(金)~25日(日)

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