Burrow:巣穴という名のお菓子屋

2016月9月14日

美しいケーキは世の中にたくさんある。しかし、Burrow(バロウ)のお菓子は奇麗なだけではない。遊び心があり、斬新で、さらにチャーミング。そしてとびきりおいしい。見ているだけで楽しい気持ちになり、口に運ぶと幸せを感じる魔法のお菓子屋を営んでいるのは、黒川綾子さんと岩田 渉さんご夫妻。マンハッタンからサブウェイで一駅のブルックリン市ダンボ地区にふたりのお店がある。

Burrowとは“巣穴”や“隠れ家”という意味。表通りに面しているのではなく、建物の1階ロビーの奥にひっそりとたたずむこのお店にはふさわしいネーミングだ。建物の入り口には”Coffee”の小さな案内がぽつんと置いてあるだけ。店名が書かれた看板はない。訪れたのは平日の12時半。店内は、コーヒーやお菓子を求める客で溢れていた。

18歳で渡米し、食に関するマネジメントを勉強した綾子さんは、NYのケーキ屋やフレンチレストランのキッチンで経験を積んだ。その後、独立を決意し、彼女が得意とするフレンチベースのお菓子のオーダーメイド専門店として、今と同じロケーションでスタートした。当時の客は雑誌、企業、そして“洗練された絶妙な甘さ”のケーキの存在を口コミで知った人たち。しかも、製菓は独学で習得したというのだから驚きだ。

「せっかく素敵なスペースがあるのだからお店にしたら?」と提案したのは、綾子さんの長年の友人だった。さらに彼女が接客もしてくれるということで、現在のケーキ屋としてのスタイルが約3年前に確立された。イートインが可能な小さなカフェコーナーがあるのも旅行者にとってはうれしい。

Burrowのコンセプトは「ドリンクを買いに来るご近所さんが、飲み物と一緒につまめるお菓子が買える店」と綾子さんは言う。「温かい雰囲気があり、仕事の合間に逃げ込むことができる“ほら穴”のような存在」と渉さんが補足する。客層を占めるのは、同じビルや近隣で働くクリエイティブ系の仕事をしている人たち。19世紀の石畳の道と倉庫街だった頃の古い建築物が多く残るダンボ地区は、アーティストが集まる場所として注目されていたが、近年は建築やデザインなどのクリエイティブな職種の人たちが集中している。

「少し気持ち悪くて、ちょっとシニカルな感じが好き」と言う綾子さんが作り出すBurrowのお菓子と内装には、独特の世界観がある。注文で作っている似顔絵が描かれたケーキやクッキーは、プレゼントされた人を驚かせたいという遊び心から誕生した。彼女が創造的になるのは夜遅くなってから。絵を描いたり、紙を切ったりしているうちに新たなアイデアが生まれるそうだ。

 

最後に綾子さんの“ニードサプライ(必需品)”について聞いた。「自慢になってしまうかもしれませんが、私のパートナーです」。綾子さんは基本的に物欲があまりないと話す。さらに、“なくてもなんとかなる”という考え方が根底にあるため、お菓子作りに関しても、すべての材料や道具がそろわないときは、他のものを代用するそうだ。彼女にとって、かけがえのない存在は、“物”ではなくていつも傍で支えてくれてくれるご主人の渉さんなのである。

Burrowのお店の情報はホームページへ。そして、綾子さんのシニカルな世界がつまったインスタグラムもフォローしよう。