Travel: ローザンヌ

Words & Images: Josh Cohen

2016月6月21日

サイモンとは、美術大学を卒業した直後に、あるライブ会場で出会った。その頃サイモンはスイスから来たばかりで、英語があまり話せなかったし、僕もフランス語がぜんぜんわからなかった。けれども、僕らはあっという間に仲良くなった。

サイモンと僕はとても仲が良かったけれども、文化的な違いによる距離を感じることが時々あった。彼が心の中でどう感じているのか、よく理解できなかったこともある。生まれ育った国が違うのだからそれは仕方がないことだろう。でもついに、サイモンの故郷であるスイスのローザンヌに訪れる機会が到来した。 

ジュネーブに朝便で到着した僕は、サイモンが車で空港で迎えに来てくれたときに目も真っ赤で頭もぼーっとしていた。“Bonjour!”と挨拶を交わし、ジュネーブから車で1時間のローザンヌへ向かった。ローザンヌについてまず最初に行ったのは、レマン湖にあるサイモンのお気に入りのスイミングスポット。寝不足と時差ボケ状態で鮮やかな青い湖水を見ると、そこは完全にシュールレアリズムの世界だった。しかし、湖に飛び込んだ瞬間に、現実の世界へ舞い戻り、完璧にリフレッシュすることができた。

サイモンの幼馴染のカレームの家にお邪魔してから、サイモンの実家へ行った。丘の上に建つこじんまりとしたその家からは、湖とアルプスの絶景を見渡すことができた。このような美しい風景の中で育つと、さぞかし創造性も培われるだろう。

 

家に到着すると、サイモンのお母さんがギュッとハグをして出迎えてくれた。彼女はおもしろくて、天真爛漫で、とても心温かい人だった。元気いっぱいで、いつでも楽しい会話ができるすばらしいお母さんだ。それに、彼女は飼い猫を愛していた。とても深く。

翌朝、僕はサイモンのお父さんに庭で会った。彼はお母さんに比べると、もっと控え目な人だったが、風変りなユーモアのセンスの持ち主だった。彼は庭で煙草を吸いながら、モロッコ旅行で買ったという赤いローブを着ていた。彼曰く、日曜日だけ特別に着るのだそうだ。写真を撮ってもいいかと尋ねると、何かを取りに行った。しばらく待っていると、厚紙で手作りした王冠をかぶりスカーフを巻いて登場し、「お待たせ。写真の準備ができたよ」と言った。

 

サイモンのお爺さんが1960年代に開業し、現在はおじさんが運営しているオーガニックのワイナリーである Domaine Wannazへ行った。おじさんがぶとう畑の見学をしてくれる前に、僕らは酔っぱらうほどワインを試飲してチーズもたらふく食べてしまった。その後は湖に飛び込んで遊んだ。

ハイキングをするためにダン・ド・ジャマンへ車で向かった。ぶ厚い雲を抜けてボコボコの山道を走行した。ヘリコプターが数機、捜査と救助のために飛びまわっていたことから、この山のスケールの大きさを窺い知ることができた。

ハイキング後は、たまたま見つけたチーズ工房に立ち寄り、工房内を見学させてもらった。チーズの匂いも味も最高に良かった。チーズ職人は、美しい手製の斧で薪割をしていた。干してあるチーズ布の前で、斧を持っている姿を写真に収めたてもいいかと僕は彼に聞いた。クリームを温めている火に薪をくべないといけなかった彼は、ゆっくりと僕の写真に付き合う時間などなかった。だから、僕は急いで撮影した。

数日後、僕はサイモンの友人のマチアスと3人で、美しい森の中にある絶壁のクリュ・デュ・ヴァンへ行った。放牧された牛とその向こうに続く美しい田園風景を眺めながら、農家のフェンス沿いを歩いた。

ローザンヌの最後の夜、サイモンの家族と友人たちが、ラクレットパーティーのために集まった。雨が降っていたので、庭にテントを張った。最後の最期までスイスの伝統と文化を堪能できた。

 

ジョシュ・コーエンは、いつでも冒険を探しているブルックリン在住のフォトグラファー。ジョシュの作品は 彼のウェブサイトインスタグラムで見ることができる。