35mmフィルムのポルトガル

Words: Becky Bradshaw
Images: Stephanie Noritz

2016月5月29日

ステファニーと私が付き合い始めて2カ月半の頃、びっくりするぐらい格安のポルトガルのポルト行きへの航空券を見つけた。聞いたことがない航空会社だったし、ポルトのこともまったく知らなかったし、彼女とは数カ月前に知り合ったばかり。それは6カ月先のチケットだったから、この交際か続いているかわからないため、予約をするかどうかはかなりの賭けだった。しかし、この安さだから、もしも半年後に別れていたとしても、ちょっとお金を損するだけ。ということで、航空券を購入し、あと半年は恋人関係を続けるという仮契約を結んだ。

幸運にも、私たちの付き合いは順調で、ハッピーでラブラブな冬を越すことができた。しかし、ポルト(英語ではオポルト)については何も知らないまま。調べてみると、ポルトとはリスボンの次に大きな都市で、国の北西に位置する。美しく、景色の良い街で、中央にドーロ川が流れる。

ひどく揺れる深夜便に乗り、私たちは雨が降る日曜日の朝にポルトへ到着した。その飛行機は、まるで子どもの頃を思い出すようなジェット旅客機だった。通路の天井からテレビモニターがぶら下がっていて、6時間におよぶ飛行時間の間、たった一本の映画しか上映しなかった。もちろん機内食も期待などできるはずもなく、90年代の残り物のような食事が出された。

ポルトの市街地中心に、手頃な値段のAirbnbを見つけた。地下鉄から出て、ポルトの街に初めて降り立った瞬間、私たちはまさに『ヨーロッパっぽい』ヨーロッパの街にいた。細い石畳の道、何世紀も前に建てられた建物、広いテラスがあるカフェ。その景色を目の当たりにした瞬間、旅の疲れも吹っ飛んだ。ふたりで一緒にこんなロマンチックな街の探索ができるという興奮でいっぱいになった。

街を体験するためには、とにかく歩き始めることが一番だと私は思っている。目を見開いて、散策することでおもしろい発見ができるのだ。ということで、私たちはとにかく歩き回った。ポルトは坂だらけの街だ。私たちがちょっと太り過ぎだったのかもしれないけれど、道の起伏がきつく感じた。午後は、路地を巡りながら、何百年前の街の様子を想像したり、通り過ぎるアパートを見上げながら、昔住んでいた人たちの物語を勝手に作ったりしながら過ごした。私のような北アメリカから来た者は、歴史のあるヨーロッパの街並みにすぐ心を奪われてしまう。何世紀も経つ建物の中に立ち、歴史を体感し、匂いを嗅げるということにとても魅了を感じるのだ。

滞在のほとんどが曇りと雨の日々だったが、そんなことは気にならないほど楽しい時間が過ごせた。ちょっと天気が悪いくらいのほうが、よりロマンチックなヨーロッパ旅行になるね、とステファニーとふたりで話した。カフェでおいしいポルトガルワインを飲んだり、タパスを食べたりしながら、雨から逃れるように走り去る人々を観察して多くの時間を過ごした。ポルトの食事は驚くほどおいしかったし安かった。たった2ユーロでグラスワイン、1ユーロでビールで飲めるのだ。これでは昼間からお酒を飲んで過ごさない理由が見つからない。

ポルトでは、多くの人がチーズがのったサンドイッチっぽい何かを食べているのを目にした。その後、その食べ物はポルトの名物料理「フランセジーニャ」ということが判明する。パンに薄いステーキ、ハム、ソーセージを挟み、その上からチーズをかけて焼き、さらにトマトとビールでできたソースをかけて食べる。そしてフライドポテトが横に添えてある。せっかくポルトにいるのだから、一度試そうということになり、泊まっていたアパート近くにある小さなカフェでステファニーが注文した。私は肉を食べないので、フライドポテトとソースだけを食べたのだが、ステファニーは皿をきれいに平らげた。よほどおいしかったのだろう。

列車で巡るヨーロッパの旅、という響きには私をワクワクさせる何かがある。私が育ったトロントでは、列車に一番近い乗り物はまったく魅力のない地下鉄だった。だからこそ列車への憧れがあるのかもしれない。ポルトガル最大の都市、リスボンはポルトから3時間だったので、数日行ってみることにした。ポルトからリスボンへの車窓はとても美しかった。列車は、海岸沿いの小さな町の小さな駅に停車しながらリスボンへ向かった。これらの駅は何世紀も前からずっと列車の乗客たちを見守ってきたのだろう。ヨーロッパで過ごす日々で印象的だったのは、言語の多様性。トロントのような多文化都市から来た私でもそう感じるのだ。列車に乗って 、英語とスペイン語で私たちが話していると、周りからどこの言葉か判別もできないくらい数多くの言語が聞こえてくる。これはとても衝撃的で、最高の体験だった。

リスボンはポルトと違い、大都市で、活気があって、観光客が多かった。到着した途端に太陽が1週間ぶりに顔を見せたが、またすぐに雲の影に隠れてしまった。たった2日間の滞在だったため、乗り降り自由の市内観光バスに乗った。私たちはバスの2階からポルトガルの首都を見渡した。風が冷たく、座席が雨で濡れていたにも関わらず、市内観光が気に入った私たちは2度も乗車してしまった。リスボンは非常に美しい街で、建築に興味のない人でも息をのむような街並みが広がっていた。48時間の滞在ではまわりつくせない活気のみなぎる都会で、列車から降り立った瞬間から歓迎されているように感じるフレンドリーな街だった。

ポルトガル最終日の夜にポルトへ戻った。最後の散歩へ出かけ、ゆっくりと路地を歩いた。賑わうテラスで座って夜を過ごし、この美しい国に祝杯をあげた。

新しい恋人と旅行に出れば、人生が変わるようなすばらしいの体験ができるかもしれないし、ケンカばかりして嫌な思いをするかもしれない。どう転ぶかまったく予期できない。幸運にも、私とステファニーは楽しい思い出と土産話、それにより深まった愛情とともに帰国した。ポルトガルの旅は大成功だった。またいつかふたりでポルトガルへ行きたいと思っている。

Stephanie Noritz はNY在住のポートレートおよびドキュメンタリーの写真家。