Travel:ウッドストック

Words & Images: Haruka Sakaguchi

2016月2月28日

ウッドストックと聞くと、泥だらけになった4万人のロングヘアの若者たちが、ジミー・ヘンドリックスの2時間にもおよぶサイケデリックなステージに酔いしれる、といういかにも60年代っぽいイメージを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、ニューヨーク州キャッツキルにあるこの自然豊かな町は、伝説の野外フェスティバルが開催されるよりもずっと前から変わり者が集まる聖域だった。多くの芸術家、音楽家、そしてスローリビングを求める人たちが多く暮らしていたのだ。

ニューヨーク市からたった数時間のドライブでウッドストックに到着する。そう、ここは「1969年に例の野外フェスティバルが開催されなかったことで有名な」街だ。美しく整備され、まるでブルックリンのような洒落たブティックが建ち並ぶ現在のティンカー・ストリートに、伝説のフェスティバルを彷彿とさせるようなパーカッションの即興演奏もフリンジ付きの革ジャケット姿も存在しない。だが、今でも少し風変わりな部分は残っている。ビンテージの雑貨やお香などの商品を扱う雑貨屋では、陽気で面白い店員が迎えてくれる。引きずるくらい長いパッチワークのコートを着て、腰まで伸ばしたヒゲをたくわえた名物老人、「グランパ・ウッドストック」が何か怪しいものを手に広場をうろついている(地元の人によると本物のヒッピーではなくて真似をしているだけらしい)。ドラマーだった故レヴォン・ヘルムの自宅兼スタジオは一般公開されており、レヴォンの生前同様に「ミッドナイト・ランブル・セッション」が定期的に開催されている。

ウッドストックの周辺の広大な牧草地には、植民地時代に建てられた家屋や酪農家が点在する。テクノロジーに頼らない、スローなライフスタイルをおくるには最適な場所だ。実際、ニューヨークで成功を収めた多くの芸術家や音楽家たちが、よりバランスのとれた生活を求めて移住している。そびえ立つカータースキル滝を一目見て、クーパー湖の湖畔を早朝に散歩してみるだけで、この土地の良さを実感するだろう。

ハルカはブルックリン在住のグラフィックデザイナー兼フォトグラファー。Instagramを通して、彼女の様々な冒険をフォローしてみよう。